ULRIKE OTTINGER BERLIN TRILOGIE

ウルリケ・オッティンガー
ベルリン三部作

ダンテは『神曲(神聖喜劇)』を、バルザックは『人間喜劇』を書きました。
オッティンガーの映画は、「人間と神々の喜劇」と呼べるのではないでしょうか?

―― 多和田葉子(小説家、詩人)

※2020年ベルリン国際映画祭
ベルリナーレカメラ(功労賞)受賞時の祝辞より

「ニュー・ジャーマン・シネマ」の時代から精力的に作品を発表しながら、日本では紹介される機会が少なかったドイツの映画作家ウルリケ・オッティンガー。その作品は、フェミニズム映画やクィア映画の文脈で論じられるなど、従来の様々な規範を揺るがす先進性が再評価されている。生々しい知性と豊かで鋭い感性を備える3つの作品が、製作から40年余りの時を超えて、ついに映画館のスクリーンに現れる。

2023年8月19日(土)、渋谷ユーロスペースにて陶酔と攪乱のロードショー!

上映作品

アル中女の肖像

Bildnis einer Trinkerin,Photo: Ulrike Ottinger © Ulrike Ottinger

アル中女の肖像国内劇場初公開

Bildnis einer Trinkerin|Ticket of No Return

1979年/西ドイツ/カラー/108分
監督・脚本・撮影・美術・ナレーション:ウルリケ・オッティンガー
音楽:ペーア・ラーベン
衣装:タベア・ブルーメンシャイン
歌:ニナ・ハーゲン
出演:タベア・ブルーメンシャイン、ルッツェ、マグダレーナ・モンテツマ、ニナ・ハーゲン、クルト・ラープ、フォルカー・シュペングラー、エディ・コンスタンティーヌ、ヴォルフ・フォステル、マーティン・キッペンバーガー

飲むために生き、飲みながら生きる、酒飲みの人生。西ベルリンのアート、ファッションシーンのアイコン的存在であったタベア・ブルーメンシャインの爆発する魅力。R.W.ファスビンダーが「最も美しいドイツ映画」の一本として選出し、リチャード・リンクレーターが最愛とする作品。

フリーク・オルランド

Freak Orlando

1981年/西ドイツ/カラー/127分
監督・脚本・撮影・美術:ウルリケ・オッティンガー
音楽:ヴェルヘルム・D.ジーベル
衣装:ヨルゲ・ヤラ
出演:マグダレーナ・モンテツマ、デルフィーヌ・セリッグ、ジャッキー・レイナル、エディ・コンスタンティーヌ、フランカ・マニャーニ

ヴァージニア・ウルフの小説『オーランドー』を奇抜に翻案し、神話の時代から現代までが5つのエピソードで描かれる「小さな世界劇場」。ユニークな映像感覚の中に、ドイツロマン主義の伝統とブレヒトやアルトーなどの近現代演劇の文脈が息づく。

フリーク・オルランド

Freak Orlando,Photo: Ulrike Ottinger © Ulrike Ottinger

タブロイド紙が映したドリアン・グレイ

Dorian Gray im Spiegel der Boulevardpresse,Photo: Ulrike Ottinger © Ulrike Ottinger

タブロイド紙が映したドリアン・グレイ国内劇場初公開

Dorian Gray im Spiegel der Boulevardpresse

1984年/西ドイツ/カラー/151分
監督・脚本・撮影・美術:ウルリケ・オッティンガー
音楽:ペーア・ラーベン、パトリシア・ユンガー
出演:ヴェルーシュカ・フォン・レーンドルフ、デルフィーヌ・セリッグ、タベア・ブルーメンシャイン、トーヨー・タナカ、イルム・ヘルマン、マグダレーナ・モンテツマ、バーバラ・ヴァレンティン

伝説的なスーパーモデル、ヴェルーシュカ主演。デルフィーヌ・セリッグ、タベア・ブルーメンシャインらが特異な存在感を持って脇を固める。国際的な巨大メディアグループのボスであるマブゼ博士の陰謀に巻き込まれたドリアン・グレイの物語を、独自の世界観で描く。

ウルリケ・オッティンガー
Ulrike Ottinger

ウルリケ・オッティンガー Ulrike Ottinger

1942年6月6日生まれ。1962年から1969年にかけて、パリでアーティストとして活動。その頃、クロード・レヴィ=ストロース、ルイ・アルチュセール、ピエール・ブルデューらの講義を受講。西ドイツに帰国し、最初の映画『Laokoon und Söhne(ラオコーンと息子たち)』(1972-73)を監督。1977年の『Madame X - Eine absolute Herrscherin』は大きな反響を得た。そして、「ベルリン三部作」と呼ばれる『アル中女の肖像』(1979)、『フリーク・オルランド』(1981)、『タブロイド紙が映したドリアン・グレイ』(1984)を発表。その後、『Johanna d’Arc of Mongolia』(1989)や『Taiga』(1991-92)などアジアを舞台に作品を監督。日本でも多和田葉子が制作に参加、出演した『Unter Schnee(雪に埋もれて)』(2011)を監督。2020年にベルリン国際映画祭でベルリナーレカメラ賞(功労賞)を受賞した。

スタッフ・キャスト

タベア・ブルーメンシャイン

タベア・ブルーメンシャイン

Tabea Blumenschein

『アル中女の肖像』出演・衣装 『タブロイド紙が映したドリアン・グレイ』出演

1952年8月11日生まれ。70年代から80年代の西ベルリンの芸術・文化を担うアイコン的な存在。音楽パフォーマンス集団「ディー・テートリッヒェ・ドーリス(DIE TÖDLICHE DORIS)」に参加。ウルリケ・オッティンガー監督の初期作品に、出演者、衣装担当、共同監督として関わる。22年にベルリンで、ブルーメンシャインの絵画とオッティンガーの写真による企画展が開催された。

ニナ・ハーゲン写真右

Nina Hagen

『アル中女の肖像』出演

1955年3月11日、東ドイツ・東ベルリン生まれ。歌手として活動を開始。1974年に発表された「Du hast den Farbfilm vergessen(カラーフィルムを忘れたのね)」が大ヒット。76年にイギリスに亡命し、その後西ドイツへ。ロック・シンガー、俳優として国際的に活躍。2021年、東ドイツ出身で第8代ドイツ連邦首相アンゲラ・メルケルが首相退任式での演奏曲にハーゲンの「カラーフィルムを忘れたのね」を選曲し、話題となった。

ニナ・ハーゲン
マグダレーナ・モンテツマ

マグダレーナ・モンテツマ

Magdalena Montezuma

『アル中女の肖像』『フリーク・オルランド』『タブロイド紙が映したドリアン・グレイ』出演

1943年、ドイツ・バイエルン州生まれ。ヴェルナー・シュレーターとローザ・フォン・プラウンハイムに出会い、俳優活動を開始。特にシュレーター監督作品に多数出演したが、ほかにもライナー・ヴェルナー・ファスビンダー、ウルリケ・オッティンガー、ローザ・フォン・プラウンハイムなどの作品に出演。1984年7月15日、死去。

デルフィーヌ・セリッグ写真中央

Delphine Seyrig

『フリーク・オルランド』『タブロイド紙が映したドリアン・グレイ』出演

1932年4月10日、レバノン・ベイルート生まれ。アラン・レネ、マルグリット・デュラス、シャンタル・アケルマンなどの映画作品に参加。俳優活動と並行して、フェミニズム運動に深く関わり、アクティヴィストとしてビデオ作品を自ら制作。2019年にフェミニスト活動に焦点が当てられたドキュメンタリー映画『デルフィーヌとキャロル』(監督:カリスト・マクナルティ)が制作され注目を集めた。

デルフィーヌ・セリッグ
ヴェルーシュカ・フォン・レーンドルフ

ヴェルーシュカ・フォン・レーンドルフ

Veruschka von Lehndorff

『タブロイド紙が映したドリアン・グレイ』出演

1939年5月14日生まれ。ドイツ人初のスーパーモデル。「ヴェルーシュカ」を名乗り、さまざまな写真家やデザイナーとコラボレーション。ミケランジェロ・アントニオーニ監督『欲望』(1966)に出演する。ボディ・ペインティングのパフォーマンスは先駆的なものとして知られており、その活動をまとめた作品集「VERUSCHKA Trans-figurations」は日本でも翻訳されて出版。同書には批評家のスーザン・ソンタグが序文を寄せた。

ペーア・ラーベン

Peer Raben

『アル中女の肖像』『タブロイド紙が映したドリアン・グレイ』音楽

1940年6月3日生まれ。大学で音楽や演劇を学んだ後、俳優として活動。1960年代にR.W.ファスビンダーらと共に劇団「アクションテアター」「アンチテアター」を設立。以降、脚本家、作曲家、演出家、プロデューサーとして映画、テレビ、ラジオなどで幅広く活躍。ファスビンダー監督作をはじめ、ダニエル・シュミット『天使の影』(1976)、ウォン・カーウァイ『2046』(2004)など多くの映画作品に楽曲を提供。

コメント

楠本まき
 

綺麗は汚い、汚いは綺麗———ヴァージニア・ウルフのフルイディティーが、オスカー・ワイルドのクィアネスが、壁崩壊前の西ベルリンでオッティンガーにより斯くも奇妙に精巧に紡ぎ直され、40年の時を経てなお観るものを慄かせ、深い悦楽へといざなう。

漫画家
遠藤倫子

無秩序で力強くて破壊的、常識を自由にブチ破っていくオッティンガーの世界。みたことのない光景、美しくて妖しい地獄めぐりに痺れまくる…好きです。私も己の鏡をバリバリと踏みつけて、この道を独りで行く。

zine「ORGASM」発行人
菅野優香
 

クィアでフェミニスト的だが、それらが決して交わることなく、互いを撹乱し合うのがオッティンガーの作品である。節度を嫌い、常識を拒むこの異端の映画作家は、旅と変身をとおして未知の映画世界への扉をこじ開けてしまう。

同志社大学教授/『クィア・シネマ』著者
北村道子

ウルリケ・オッティンガーの類稀なる作品が日本にやって来た!彼女の才能はいかにして開花したのか?それを知るには映画を観るしか方法はないのです。

スタイリスト
花代

この街でこの様な大人達に囲まれて青年期を過ごせた事は私の宝であります 故郷の未来の子供達に伝えたい勇気がここには詰まっています

アーティスト
四方田犬彦

これはいったい何なのだ。欠落しているのはハーケンクロイツだけで、世界中のキッチュというキッチュが全集合している。世界は深さを喪失した。おもちゃ箱がひっくり返り、怪物たちの行進が始まった。

映画誌・比較文学
中原昌也

N.D.W(ノイエ・ドイチェ・ヴェレ)における『BLANK GENERATION』(1980、監督ウリ・ロンメル)みたいな作品ってあるんですかね、と明石(政紀)さんに聞きたかったけど果たせないままになった。追悼の意味を込めて、オッティンガーの作品を見よう。

ミュージシャン、作家
小島秀夫

飲酒や喫煙がロックなサブカルだった70年代。ベルリンにやって来た名もなき女の奇行ともいえる“飲酒観光”。ファッション、メイク、カラー、冷戦下のベルリンの風景。ニューウェーヴなルックが、酔ってしまうほどに美しい。砕け散る彼女たちの”肖像“は、この現在(いま)にこそ響く。
※『アル中女の肖像』へのコメント

ゲームクリエイター
ジーン・クレール Gene Krell

『アル中女の肖像』において、「彼女」の衣装は華麗さとウィットで時代を特徴づけている。従来のシックに則っておらず、ニュアンスよりもディテールを重視し、誇張を美徳とするものである。

クリエイティブ・ディレクター
清原惟

神話のように美しく残酷な世界は、オッティンガーだけが見せられる夢なのかもしれない。でもその中に、生身の人間たちが生きる切実さがあることに、時折気づかされる瞬間があって、その夢をよりいっそう美しくしているのだと思った。

映画監督・映像作家

論考

蛇行する物語 ウルリケ・オッティンガーの詩的映像世界(抄訳)

クリスティーナ・ヤスパース Kristina Jaspers(ドイツ・キネマテーク キュレーター)
『Ulrike Ottinger Sammlung Goetz, München』(2012, Hatje Cantz Verlag)収録の論考より
翻訳:渋谷哲也

ウルリケ・オッティンガーが国際ランクのドイツ映画監督の中でもっとも独創的な作家の一人であることは明らかだ。その作品の多くが大きな賞を受け、彼女の写真や映画は世界中の著名な美術館で展示上映されている。オッティンガーの豊穣であると同時に厳格な形式を持つ映像言語は鑑賞者を未知の領域へと誘い込む。それは東アジアの辺境の地であったり彼女の想像力の生んだ神話的で空想的な広野だったりするが、いつもそこでは我々がこれまで見たこともない人々や事物を目にすることになる。「ベルリン三部作」、『アル中女の肖像』(1979)、『フリーク・オルランド』(1981)、『タブロイド紙が映したドリアン・グレイ』(1984)で彼女は80年代初頭における古代の伝説から現代の消費とメディア社会を大胆に架橋してみせた。巧妙かつ繊細に感情を込めて彼女はアウトサイダーやエキセントリックな人々の世界を提示する。ベルリンの工場跡地や都市の風景をセットに利用しつつそれを劇的に異化する。

(中略)

オッティンガーは自身で脚本を執筆し、カメラで撮影し、多くの自作を自主製作している。彼女は包括的な意味で自作映画作品の作者である。その際彼女はキャラクターの背後に隠れるのではなく、むしろ語り手として常に自分を可視化する。すでに『フリーク・オルランド』の副題「ウルリケ・オッティンガーの語る5つのエピソードからなる小さな世界劇場」によって彼女の主観的視点を明示している。彼女の物語形式は頻繁にエピソード劇に基づいており、各々の場面が同じ重要さで並列されている。一見すると直線的な構造と思われるが、オッティンガーにおいては蛇行する形を取る。蛇行という婉曲的ラインはまさに我々に一欠片ずつ開示されてゆく生そのものを表している。ずっと遠くに離れてみれば蛇行形式の美しさが見て取れる。しかし中に立っている者にとっては見通すことのできない迷宮となって現れる。道がどこへ続くか主人公には分からない。だがあらゆる角や曲道には主人公を驚かせるものが潜んでいる。オッティンガーは多くの自作映画で神秘主義劇や中世の祝祭行列を引用する。例えば『フリーク・オルランド』の宗教裁判の行列や『Superbia - Der Stolz(スーパービア‐誇り)』(1986)の誇り高き者たちの行列などである。バーレスクやグロテスク劇を大いなる遊戯的喜びとともに挙行する。注目すべきことは彼女の視覚性過剰な題材の多くが「様々な歌声」の音楽劇と見なしうることだ。明白にアレゴリー的に理解されうる登場人物が象徴的な行動を実践し、調整と対比の交代する戯れにより物語が進展する。『タブロイド紙の映したドリアン・グレイ』で上演されたペーア・ラーベン作曲のバロック風オペラにおいてとりわけそれは明白だ。だがそれ以外の場面も音楽的・舞台的な読みを許容する。

劇場情報

                               
地域 劇場名 公開日
北海道
北海道 シアター・キノ 上映終了
関東
東京 ユーロスペース 上映終了
東京 ストレンジャー 上映終了
東京 下高井戸シネマ 上映終了
東京 目黒シネマ 上映終了
神奈川 横浜シネマリン 上映終了
千葉 キネマ旬報シアター 上映終了
甲信越
長野 上田映劇 上映終了
中部
愛知 シネマスコーレ 上映終了
関西
大阪 シネ・ヌーヴォ 上映終了
京都 出町座 上映終了
兵庫 元町映画館 上映終了
中国・四国
岡山 ニューガーデン映画祭2024 上映終了
広島 横川シネマ 上映終了
九州
福岡 KBCシネマ 上映終了
鹿児島 ガーデンズシネマ 上映終了